稲上耳鼻咽喉科・気管食道科クリニックサイトはこちら

舌がん/咽頭がん/喉頭がん/甲状腺腫瘍 のご案内

 

左のQRコードを読み込んでいただくと、携帯サイトがご覧いただけます。

トップページ»  院内新聞»  2015年»  2015年7月

2015年7月

2015年7月

一滴の血液で がん診断

一滴の血液で がん診断  1滴の血液や尿、唾液から、何種類ものがんを超早期の段階で診断するという開発プロジェクトが進行中です。NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が国立がん研究センターや東レ、東芝など9機関と共同で実施している「体液中マイクロRNA測定技術基盤開発」プロジェクトです。 このプロジェクトでは、1回(1滴)の採血で10種類以上のがんを早期診断できる技術を、2018年度末までに開発することを目指しています。2015年夏には早くも、乳がんと大腸がんの早期診断の試みを始めるそうです。 同プロジェクトの研究開発責任者を務めるのは国立がん研究センター研究所 分子標的研究グループ 分子細胞治療研究分野長の落谷孝広氏です。

がんの増悪にかかわる物質として着目しているのが「エクソソーム(exosome)」という粒子です。さまざまな細胞が分泌し放出する粒子で、細胞間の情報伝達などに関わっています。「エクソソーム」自体の発見は今から30年ほど前にさかのぼりますが、発見当初は細胞の不要物的な存在としか認知されず、その機能や存在意義などは長い間、不明でした。ところが、2008年にエクソソーム内に「マイクロRNA」と呼ばれる物質が内包されて他の細胞へと受け渡されている可能性が示されるや否や、ここ数年の間に関連研究が一気に加速し、今日に至っています。最近明らかになってきたのは、がん細胞が「エクソソームを自らの分身とし、この粒子を操ることで悪性を発現している」という事実です。がん細胞はエクソソームを通じて、周囲の正常細胞などをあざむき、わなにかけ、時には味方に引き入れる。これによって、増悪や転移を引き起こしているという。
「マイクロRNA」は20個前後の少数の塩基(遺伝子の構成物質)から成るRNA(リボ核酸)で、人間の体内には2578種類が存在します。マイクロRNAは小さいが力持ち。1つのマイクロRNAが多くの分子を制御できます。例えば、特定のマイクロRNAをがん細胞に注入すると細胞の性質が劇的に変化することが分かっており、肝臓がんの細胞ではマイクロRNAを注入することで細胞が正常化する現象が観察されています。逆に、がん細胞が特定のマイクロRNAの機能を下げることで悪性度を増していることも明らかになってきました。

こうした驚くべき性質から、がんのメカニズムを解明、それを診断・治療法の開発に重要な物質とわかってきました。マイクロRNAに起こる異常ががんの本質であり、マイクロRNAの種類で、どのようながんかが分かる。それゆえにがん制圧に利用できる可能性があるのです。マイクロRNA、そしてその“箱舟”のように機能するエクソソームが、がんの増悪や転移に深く関わっているが明らかになりつつあります。  
エクソソームを介した細胞間相互作用 がん組織は一様でなく、通常のがん細胞のほか、“親玉”とされるがん幹細胞や正常な細胞など、さまざまな細胞から成る。これらの細胞は互いに多くの情報をやり取りしており、エクソソームはこれに深く関わる。逆に言えば、エクソソームの分泌を止めることでがんの転移を抑えられる可能性があります。マウスを使った卵巣がんの実験では、がん細胞によるエクソソームの分泌を止めることで転移を抑えることができたという研究があります。がん細胞の増殖を抑える働きを持つマイクロRNAも既に見つかっています。
乳がんでは治療後10~20年といった歳月を経て再発するケースがしばしば見られるが、ここにもエクソソームが関与している可能性が指摘されています。こうした晩期再発では再発までの間、乳がん細胞は骨髄の中で長く“休眠状態”にある。実は最近、正常細胞が分泌するエクソソームを乳がん細胞が横取りし、これによって骨髄中で休眠状態を保ち、生存していることが分かってきました。
さらに、がんの脳転移との関係も明らかになりつつあります。脳は異物の侵入を防ぐ血管脳関門(blood brain barrier:BBB)と呼ばれる機構を備えるが、がん細胞がエクソソームを制御してBBB(の関門)を開けるということがわかってきました。
癌の種類によってエクソソームによって運ばれる特定のマイクロRNAが大きな役割を果たす。例えばある研究では、乳がんの脳転移例のほぼ全例にマイクロRNA-181cの発現が見られることがわかりました。エクソソームは、血液のほか、尿や唾液など、さまざまな体液に含まれる。つまり、ごく微量の体液から、エクソソームに含まれるマイクロRNAをマーカーとして、さまざまな種類のがんを一度に診断できるということです。落谷氏が研究開発責任者を務めるNEDOプロジェクトは、まさにここに着目した取り組みです。がんの診断だけでなく、その結果に基づく創薬や個別化治療にもつなげることができる。 現状で解析が最も先行しているのは、乳がんです。マイクロRNAを利用して99%以上の感度と特異度で乳がんを診断でき、直径3mmの乳がんも診断できたという。また尿に含まれるエクソソームを使って、膀胱がんを検出できる可能性が示唆されています。 マイクロRNAとその箱舟であるエクソソームに関する研究は近い将来、がん医療に大きな変革をもたらしそうだ。

2015-08-07 18:50:52

2015年

 
PAGE TOP