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2013年4月

「たばこ」はPM2.5の塊・・・喫煙の居酒屋は北京並み

「たばこ」はPM2.5の塊・・・喫煙の居酒屋は北京並み

中国で発生した微小粒子状物質(PM2.5)が大陸から飛来する越境汚染への関心が高まっています。ところが、喫煙可能な室内は濃度が極めて高い場所なのです。例えば、禁煙していない居酒屋だと、北京市の最悪時の濃度と変わらないのです。中国から飛来するPM2.5より屋内の全面禁煙の重要性を訴えるべきです。「PM2.5はたばこの煙も危険だ」・・・医師らでつくる日本禁煙学会は2月、こんな見解を発表しました。直径が2.5マイクロ(マイクロは100万分の1)メートル以下の微粒子は化石燃料や草木などが燃えたときに発生する。たばこの煙もそのひとつで、フィルターを介せずに周囲に広がる副流煙に多い。中国から飛来するPM2.5よりも受動喫煙の影響の方が大きいということを認識すべきです。

ショッキングな数字

様々な研究者が実際に測定したデータをまとめた学会の資料には、ショッキングな数字が並ぶ。自由に喫煙できる居酒屋のPM2.5の濃度は空気1立方メートルあたり568マイクログラム。中国政府が「最悪」と評したときの北京市の大気とほぼ同じ水準です。禁煙席でも、喫煙席とガラスや壁で完全に仕切られていない場合は同336マイクログラムに達した。

PM2.5 濃度と健康への影響(米環境保護局の資料)(一立方メートルあたりのマイクログラム)
緊急事態(251~) 一般の人々の呼吸器に重い症状が現れる恐れがある
大いに危険(151~250) 一般の人々の呼吸器に疾患が明らかに増える
危険(66~150) 一般の人々の呼吸器に症状が現れる
弱者に危険(41~65) 感受性の高い人の呼吸器に症状が現れる
許容範囲内(16~40) 特別に感受性の高い人の呼吸器に症状が現れる
良好(0~15) 健康の危険はほとんどない

国の環境基準値は1日平均で同35マイクログラム、環境省の検討会がまとめた外出自粛などを呼びかける暫定指針は同70マイクログラムだ。禁煙学会などのデータは環境省や自治体が発表する速報値に相当する。1日分の測定値から1時間分の平均を示す環境基準値とは単純には比較できない。ただ、大気汚染の速報値で同100マイクログラムを超すことはほとんどない。

屋外の汚染を怖がるのなら、喫煙可能な喫茶店や飲食店を怖がってほしい。たばこを吸う家族がいると、住宅内のPM2.5濃度は大きく上昇する。大阪市立環境科学研究所の調査によると、誰もたばこを吸わない家庭は同20マイクログラム程度だったのに対し、喫煙者のいる家庭では同50マイクログラム前後に達した。小さな子どもや肺に病気を持つ人はPM2.5の影響を受けやすいとされる。
空気清浄機を使っても、たばこのPM2.5を取り除くのは難しい。ベランダなどでたばこを吸う「ホタル族」は少なくないが、PM2.5はサッシの隙間から入り込むほか、呼気に含まれたり、衣服に付着したりするため、室内に持ち込んでしまうという。

重要なのは大気中に漂うPM2.5よりもたばこの煙の方が有害性が高いことを認識すべきことです。煙の中には70種類近い発がん性物質が含まれている。様々な調査から、受動喫煙による死亡リスクはPM2.5の値よりもはるかに高い。完全分煙にするか、室内を全面禁煙にしないと、効果は薄い。受動喫煙で死亡する人は年間6800人に達するといわれています。英国やイタリアなど受動喫煙防止法を導入した国では、心筋梗塞などのリスクが減ったとの報告があります。越境汚染だけでなく、身近にリスクが存在することも認識してほしいものです。

大人の食物アレルギー増加 突然発症、治療手探り乳幼児と異なる原因

大人の食物アレルギー増加 突然発症、治療手探り 乳幼児と異なる原因

特定の食べ物が原因で皮膚や呼吸器などにアレルギー反応が出る「食物アレルギー」を成人になってから発症する人が増えています。原因となる食品の傾向は乳幼児と異なり、野菜や果物が多い。発症の詳しいメカニズムは解明されておらず、治療法は確立していないが、患者の体質に応じて症状を改善する動きが大規模病院を中心に始まっている。

花粉の季節要注意

食物アレルギーは、身体が食べ物に含まれるたんぱく質を異物と認識し、防御のために過剰な反応を示すことで起きます。生活環境の変化に伴い、乳幼児とともに、大人の患者が増えている。10年ほど前から成人の患者が急増し、20代では1%程度の人が症状をもっている。成人患者の10人に1人は原因となる食べ物を口にすると、ショック症状などの重篤な症状を引き起こしています。乳幼児と成人の食物アレルギーは原因となる食べ物の傾向が大きく異なります。花粉症の季節に食物アレルギー反応が激しくなるともいわれています。

厚労省研究班が2011年にまとめた「診療の手引き」によると、乳幼児を中心とした2478人に対する調査では、鶏卵が38.7%で最も多く、牛乳(20.9%)、小麦(12.1%)などが上位を占めた。成人はリンゴや桃、梨などの果物・野菜が48.4%で最多。以下は小麦(15.7%)、エビやカニなどの甲殻類(7.2%)と続いた。ただ、発症の詳しいメカニズムが解明されておらず、なぜ果物や野菜が成人に多いのかは分かっていません。

幼児の場合、消化機能の発達とともにアレルギー反応が減ることが多い。原因となる食べ物を少しずつ摂取することで体の免疫を慣らす「経口減感作療法」は牛乳などには有効だが、ナッツ類や魚介類には効果が小さい。一方、成人患者の治療は難しいとされています。成人のアレルギーを巡っては、原因物質がまず皮膚から吸収されて抗体がつくられ、その物質を含んだ食品を食べて反応が出るケースもあります。2010年ごろから全国的に問題となった洗顔せっけん「茶のしずく」が代表例で、せっけんに含まれる小麦由来のたんぱく質が原因となりました。食物アレルギーを完治させる方法はまだ確立していません。

食物アレルギーをもつ人が、原因となる食品を知らずに食べないよう、食品メーカー各社は表示方法を工夫するとともに、製造過程での混入防止を図るなど安全対策を取っています。消費者庁の省令で表示を義務付けているのは、エビ、カニ、小麦、ソバ、卵、乳、落花生の7品目です。

食物アレルギーやハチ毒などは、人によって呼吸困難や失神など「アナフィラキシーショック」と呼ばれる急激な症状を起こし、対処を誤ると死亡する恐れがあります。昨年12月に東京都調布市の市立小学校で乳製品にアレルギーがある女子児童(11才)が給食後に死亡しました。食物アレルギーなどによる急性ショック症状を緩和するアドレナリン自己注射薬「エピペン」が保険適用となり、安全な使い方の講習会など普及に向けた動きが広がっています。エピペンはこの症状を10~20分ほど緩和し、救急車の到着まで時間を稼ぐための注射薬です。アレルギーの子を持つ保護者と学校などとの間で、緊急時の対応を決めておくなどの備えも徐々に浸透してきています。