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2008年7月

医師が献身的に支えてきた医療の崩壊 7月号

1999年の横浜市立大学の「患者取り違え事件」以降、医療に対するバッシングが始まり、患者の意識に変化が起こり、ペーパーワークや説明などにかかる時間が増えています。
一人の患者を診る時間と労力が、以前とは変わってきているのです。その上、医療安全をはじめ、院内で開催される各種委員会がものすごく増えています。

人数的にギリギリでやってきたところに患者さんの要求の高まりなども重なり、医師の不満が噴出しているのが現状です。
今までは基礎研究の実績のない臨床医は三流だ、大学教授は、すごい権威のあるポストなんだ、医局あってこその自分だなどと皆が思っているから、教授に従ってきました。しかし、この医局制度が「幻想」となりつつあります。卒業したての頃は生活を犠牲にし、24時間労働が普通でした。研究と臨床を同時にこなさなければなりません。このようなことを強いる大学病院の給与は最低水準です。最近はもっと楽して(医局を離れて)臨床技術を上げようとする若手医師が増えています。

医師が献身的に支えてきた医療の崩壊

医師は、技術者として養成されている面があるので、スキルを発揮できる施設を希望します。規模が大きく設備が充実し、症例数が多い病院には、給与が安くても医師は集まる。反対にスキルが発揮できる状況にない病院では、給与を高くしないと医師は来ません。専門的なスキルが発揮できる職場ほど給与が低くなるのは、専門職市場で見られる現象です。
「いい医療を受けたいが、お金は出したくない」という要求に応えるのは無理です。この矛盾に全然気付かせずに、満足度調査を実施しても意味はありません。

毎日新聞が2007年1月23日一面で、日本の医療政策を低医療費政策として取り上げました。そこではGDPに占める日本の医療費割合が「先進7カ国(G7)の水準にほど遠く、差が広がるばかり。
2003年のG7平均は10.1%で、日本はG7平均に比べて医療費の支出が2割も少なく」、医師数も「OECD平均に達するには、医師を1.5倍に増やす必要があると」と指摘しました。誰もがすぐに入手でき、かつ医療に関心のある人の間では当たり前のデータなのです。それまで一般紙はほとんど取り上げず、国民の多くが知らされていませんでした。「日本が低医療費政策を取っている」「医師の給与もさほど高くはない」「医師は大変な状況で働いている」などという「事実」をメディアが伝えていません。

日本では医療に関する満足度は高くはないのに、負担感は強い。それは正しく情報が伝わっていないからです。病院から医師がいなくなる原因がここにもあるように思います。

肥満は大腸・乳がんなど種々のがんのリスク・・・がん予防では体重管理も重要 7月号

肥満は大腸・乳がんなど種々のがんのリスク・・・がん予防では体重管理も重要

世界がん研究基金と米国がん研究機構は食道、膵臓、大腸、子宮内膜、腎臓、乳房(閉経後)のがんは肥満と関連があると判定しています。
わが国でも男性の肥満者が増加しており、肥満に伴うがんの増加が予想される。世界がん研究基金と米国がん研究機構は、腹囲が1インチ(2.54cm)増えるごとに大腸がんのリスクは5%増加すると報告している。

乳がんについては閉経前女性ではBMIが2増加するとリスクは6%低下するが、閉経後では逆に3%増加し、ウエスト・ヒップ比が0.1増えるごとにリスクは19%増加する。また、肥満により子宮内膜がんのリスクは52%増加、食道がん(腺がん)のリスクも2倍以上増加するとしている。わが国の肥満度と大腸がんとの研究でも、肥満により大腸がんのリスクが増加するそうです。

大腸がんは腺腫を経て発がんすると考えられるが、九州大学の古野純典教授らの検討では、メタボリックシンドローム患者は非メタボリックシンドローム者に比べて大きな大腸腺腫を有する率が1.5倍以上高くなるとの結果が得られている。また、20歳以降の体重増加は閉経後乳がんの発症リスクを増加させることも報告されている。

従来、がん予防では野菜・果物などの摂取が推奨されたが、2007年の報告書「食物・栄養・運動とがん予防」は第1のがん予防として成人期を通じて体重増加と腹囲増大を避けることを推奨している。一方、日本人を対象とした追跡研究ではやせでもがん発生や全死亡のリスクが高まることが示されている。

成人男性と小児の肥満が増加していることから、がん予防においても運動や適切な栄養摂取とともに体重管理の重要性が広く認識されることが望まれます。