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2025年7月

顔面神経麻痺になったら耳鼻咽喉科を…後遺症を残さないために

 顔面神経麻痺は「顔がまがってきた」、「眼が閉じにくい」、「水が口からこぼれる」、「口の動きが悪くなる」など、顔の筋肉が動きづらくなる病気です。年間、人口10万人あたり50人ほど発症するといわれ、約2割の方に後遺症が残ります。顔面神経は、顔を動かす、涙や鼻水をつくる、舌で味覚を感じる、耳周辺の触覚という4の機能を持つ混合神経です。左右それぞれに走行するため、顔面神経麻痺の症状は片側に現れる人が多いが、両側に起こる人もいます。
 患者さんの多くは、顔に異変を感じて鏡を見て、左右差に気づきます。そのほか、タイプによっては麻痺以外にも難聴やめまい、耳の痛みなど、さまざまな症状が現れます。目が閉じにくいので眼球が乾燥し、ドライアイや結膜炎になる。顔面の片側だけにこのような症状が見られたら速やかに耳鼻咽喉科を受診しましょう。早期に治療を始めるにはまず原因を特定することが重要です。原因が分かれば次に麻痺の程度診断を行い、その結果に基づいて治療を開始することができます。耳鼻咽喉科では原因の特定から治療までが一貫して行われるため、他科を回って時間をロスすることを防げます。  顔面神経麻痺で顔に痛みが出ることはありません。ただ、顔面神経には耳周辺の触覚に関与する神経も含まれるため、耳周辺の痛みを起こすことはよくあります。脳卒中で顔面に異変が出るときは、大抵は顔面以外にも症状が出ます。片手、片足の麻痺や、ろれつが回らない、といった症状を伴うため、区別がつきます。
 顔面神経麻痺は主に2つのタイプがあります。最も頻度の高い「ベル麻痺」は、口唇などに水ぶくれができる「口唇ヘルペス」と同じ単純ヘルペスウイルスI型が原因です。口唇ヘルペスの治癒後もウイルスが体内に潜んでいて、何らかのきっかけで再活性化して神経の麻痺を起こします。次いで多い「ラムゼイ・ハント症候群(以下、ハント症候群)」は、水ぼうそうの原因である水痘・帯状疱疹ウイルスにより発症します。ベル麻痺と同様に、水ぼうそうにかかった人の体にウイルスが潜伏していて、あるとき再活性化して顔面神経麻痺につながります。
 顔面神経は脳の神経細胞から始まり、顔の筋肉まで達しています。その途中で神経が炎症を起こしてむくみます(浮腫)。頭蓋骨の狭い骨の間を通るため神経がギュッと締まり、損傷するので麻痺が生じます。軽ければ元通りに復活しますが、神経線維が死んでしまうと、再生しようとするときに不具合が生じて後遺症が残ってしまいます。 後遺症を残さないためには、顔面神経麻痺と分かった時点でできるだけ早く、適切な薬剤により治療を開始することが大切です。理想は、症状が現れた日から始めることです。神経の再生を助ける特効薬はないものの、早く薬を使えば悪化を抑えることができます。
 かなり重症の患者さんに限り、むくんだ神経の圧迫を取り除く手術(顔面神経減荷術)をすることもありますが、初期の段階では薬で治療を進めるのが一般的です。
 主な後遺症は麻痺が残るだけでなく、筋肉だけが刺激されてギュッと縮こまる、「拘縮(こうしゅく)」あるいは神経が再生する際に混線し、口を動かそうとすると目が閉じる、目を動かそうとすると口が動くという「病的共同運動」です。
 後遺症に対しては、発症の2~4カ月後くらいからリハビリテーションを始めます。拘縮を悪化させないために筋肉を伸ばすマッサージをしたり、鏡を見ながら動かしたい部位を分けて動かす「バイオフィードバック」という練習で、病的共同運動を抑えたりします。その状態が固定しないように、リハビリはずっと続けなければなりません。
 早期の治療で後遺症を残さないために麻痺になったらすぐに耳鼻咽喉科を受診しましょう。