2025/10/27
聴こえ8030運動・いつまでも「ささやき声」も聴きとれるように
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会は、加齢性難聴の周知や予防、早期の対応などを目的とした「聴こえ8030運動」を展開している。「80歳で30dBの聴力を保とう」と呼びかける啓発運動です。
30dBはささやき声程度の大きさに相当し、30dBの聴力は軽度難聴(25dB以上40dB未満)に該当します。日本人の近年の調査によれば、80歳で30dBの聴力を維持できている人の割合は約30%です。
加齢性難聴は認知症の発症リスク
加齢性難聴は、耳の奥に位置する蝸牛(かぎゅう)と呼ばれる部位の、音を感知する有毛細胞が加齢によって減少することが主な原因となっています。失われた有毛細胞は再生しないため、加齢性難聴そのものを改善する方法はありません。難聴と認知症の詳細な機序までは明らかになっていませんが、難聴があると認知症の発症リスクを高めることは事実だといえます。聴覚の機能が低下すると、耳から入る音の情報を脳にうまく伝えることができなくなります。音の情報、特に言語は脳にとって重要な刺激です。刺激が少なくなると脳が活性化しにくくなって、脳の萎縮につながり、認知機能の低下を招くと考えられています。難聴による社会的孤立も認知症のリスクとなります。
加齢性難聴の進行を抑えるには
栄養バランスが取れた食事、適度な運動、規則正しい睡眠、禁煙といった基本的な生活習慣の見直しに加え、聞こえを守るケアを心がけることが大切です。
対策としては、常に騒音がある場所は避ける、騒音下で仕事をしている場合は耳栓をする、静かな場所で耳を休める時間を作る、大きな音でテレビを見たり音楽を聴いたりしないといったことが挙げられます。
補聴器がもっと一般的に受け入れられるものに
補聴器の装用に煩わしさを感じる高齢者は多い。日本の補聴器装用率は欧米先進国に比べると約3分の1となっています。補聴器の装用が一般的になっていることを期待しています。
AirPods Proなど、市販の補助ツールが登場
最近は、音を大きくする集音器や、ヒアリング補助機能がついたアップル社のワイヤレスイヤホン「AirPods Pro2」「AirPods Pro3」などさまざまな機器が市販されています。AirPods Proは専用のアプリケーションが管理医療機器として認められ、軽度から中等度の難聴では補聴器の代わりに使用できるとされています。こうした機器を使用して補聴器の装用に慣れていくのもいいかもしれません。ただ、補聴器に比べるとバッテリーの駆動時間が短いというデメリットはあります。日常的に使用するにはやはり、補聴器が勧められます。