2025/12/02
健康診断の見方
胸部レントゲン
集団健診につきもののレントゲンは、かつては結核の発見には有用なものでした。 しかしがんはレントゲンよりもCTの方が見つけやすいです。
上部消化管検査
胃のバリウム検査は、胃潰瘍のような窪みを見つけるのに向いていますが、胃がんを発見するなら圧倒的に胃カメラのほうが優れています。
コレステロール値
がんについては、コレステロール値が高い方がなりにくいことが、アメリカでも日本でも研究から明らかになっています。コレステロール値が高いほど免疫が活性化し、がん細胞の増殖を抑えるからとされています。日本では、死因トップのがんを防ぐためにコレステロール値をむしろ高めのほうが良いといわれています。
血糖
血糖値でよく使われる指標は、血液中にブドウ糖と結びつくヘモグロビンの割合を見る「ヘモグロビンA1c」ですが、これをどこまで下げた場合に最も死亡率が低いか、という研究が世界有数の医学雑誌に発表されました。4万8000人を対象にした大規模な調査の結果、ヘモグロビンA1cの数値を7.1%まで下げるほどに死亡率も下がるのに、これ以下になると死亡率は逆に上がることがわかったのです。 以前は「HbA1cをできるだけ下げる」方向が主流でしたが、現在は“低血糖リスクの最小化”が最優先となっています。低血糖は心血管イベントや認知症リスクを上げることが知られ、過度な厳格管理は推奨されません。75〜80歳以上ではHbA1c 7.0〜8.0%、(空腹時血糖ではなく)食後血糖 180〜200 mg/dL 未満など、生活の質(QOL)を害さない緩い基準が一般的です。
肝機能
・AST(GOT)・ALT(GPT)肝細胞のダメージを表す指標正常目安:10〜40 IU/L程度
・γ-GTP(ガンマ)胆道系障害・アルコール・肥満/脂肪肝との関連:〜70 IU/Lが一般的な基準
・ALP(アルカリフォスファターゼ)胆道系(胆のう・胆管)の詰まりで上がる:100〜350 IU/L
肝機能のASTやALTは、肝炎を早期発見するための数値だとされています。しかしアルコールの飲みすぎで肝硬変や肝がんになるのは、もともとB型やC型の肝炎ウイルスを持っている人です。持っていない人たちにとっては、さほど関係ないことがわかっています。したがって医療現場では、ASTやALTの数値よりも、B型やC型のウイルスを持っている人にその治療をすべきという考え方に変わってきました。C型肝炎は治療薬進歩によりほぼ完治できるようになりました。現在は、適切な治療を受ければ肝硬変・肝がんへの進行を大幅に防げます。
近年の肝機能管理は脂肪肝が主役疾患になり、生活習慣病の一部として扱うALT<30を目標とする傾向になっています。補足ですが
・コーヒー・地中海食・適度な運動が肝機能をよくする。
・ある種の糖尿病治療薬が肝臓にも良い影響。
・「サプリによる肝障害」が世界的に増加中。効果が強いと宣伝される海外製は特に注意。
飲酒+サプリは肝障害リスクをさらに上げます。
血圧…2つの学会で異なる高血圧治療ガイドライン
日本人間ドック学会は2014年、高血圧の基準値を上が147、下が94と発表しました。150万人に及ぶ受診者のデータから弾き出した数値です。ところが日本高血圧学会や日本医師会が、より厳格化した「高血圧管理・治療ガイドライン2025」を発表しました。こちらは、75歳以上を含むすべての年齢層の降圧目標を、診察室血圧で130/80㎜Hg未満と定めたのです。これまで75歳以上の人の目標値は75歳未満よりも上下ともに10㎜Hgずつ高かったのです。アメリカで行われた調査で最高血圧170の人が降圧剤を飲んだ場合と飲まなかった場合を比較すると6年後に脳卒中になる確率は降圧剤を飲まずに脳卒中になった人は8.2%。飲んでいたのに脳卒中になった人は5.2%でした。統計上は有意の差が認められるが、血圧の薬を飲んだところで、脳卒中になる人はいます。
一方、処方される降圧剤には運転禁止薬もあります。眠気、注意力の低下、めまい、意識障害などの副作用が生じるので事故に繋がる危険があるためです。風邪薬や頭痛薬や睡眠薬なら飲んでから運転するのは危ないという知識がありますが、血圧の薬にはそうした一般的な認識がありません。最近の高齢者の交通事故に関与している可能性があります。
検診の結果は個人差があるのでたとえ異常があるといっても一喜一憂しないことも必要でしょう。