2026/04/28
難聴は認知症の大きなリスクになる
難聴の人が必ず認知症になるということはありません。逆に難聴を治せば認知症にならないかというと、そんなこともありません。認知症を招くリスクはいろいろありますが、その中でも難聴は大きなリスクになっています。認知症の14のリスクというのは「教育不足」「難聴」「運動不足」「高LDLコレステロール血症」「糖尿病」「高血圧」「うつ」「喫煙」「過剰飲酒」「頭部外傷」「肥満」「社会的孤立」「大気汚染」「未矯正視力低下」となっています。この14のリスクの中でも最も寄与率が高いのが難聴の6.7%だったのですが、社会全体でというのがポイントです。そのため社会全体で難聴を減らせば、認知症のリスクも下がり、認知症になる人を減らすことができます。
健診の聴力検査というのは、日常会話でよく使われる1000ヘルツと4000ヘルツの音が聞こえるか聞こえないかだけを見ます。耳鼻科でやる聴力検査は、低い音から高い音まで7種類の周波数の音をどの小ささまで聞こえるか検査します。テレビの声や人の話を聞きにくかったり聞き直すことが多い方は耳鼻科できちんと聴力を調べてもらったほうがよいです。
難聴が進みやすい生活習慣とは
耳鼻科を受診して聴力を調べ、難聴になっているのなら、早めに必要な対策をとることで、将来的な認知症リスクを下げることができます。現時点で聴力が悪い場合、放っておくとどんどん悪くなります。元の聴力を取り戻すことはできなくても、落ちるカーブを緩めることは可能で、そのスピードは個人差が大きく、「健康的な生活」をしている人は落ちにくい。平均的な聴力よりも悪いことが分かったら、生活を見直すきっかけにしてほしいと思います。
言葉の聞き取りというのは、聴力だけでは決まりません。脳がその言葉をどの程度のスピードで理解できるかが問題になります。同じ音量でも、ゆっくりはっきりしゃべってもらえば分かりやすい。バラエティ番組は、アナウンサーのようにはっきりと発声してくれるニュースよりも聞き取りにくくなります。聞き取りにくくなる理由は聴力の低下もありますが、脳の解析能力が落ちるせいもあります。自然な状態では、いろいろな音が入ってくるでしょう。その中で脳は「この音は重要」「この音はいらない」と計算し、ノイズを除きながら聞いているわけです。必要な音だけを大きくして聞いていると、脳が難しい計算をしなくなります。そのため、いろいろな音が入ってくる雑音下の聞こえ、複数人数の聞こえ、早口の人の聞こえなどが悪くなっていきます。
それでも聴力は少しずつ落ちていくので、本当に困るようになったら補聴器を検討しましょう。「いつから使うべきか」というタイミングは気になります。基本的には「聞き取りにくいな」という感じが出てきた時」です。「人の話が聞き取りにくい」「聞き返すことが増えた」などです。
一方で、中等度難聴になったら絶対に使わなければいけない、というものでもありません。1つには費用の問題があって、補聴器は機種によっても異なりますが、一般に片耳15万~20万円、両耳で30万~40万円程度はかかります。その費用と生活上のメリットがマッチしないこともあります。だから我々の外来で必ずやるのは「貸し出し」です。「使いたくない」ということであれば、定期的に聴力検査を続けて、「もっと悪くなったら使いましょうか」となります。メリットとデメリットのバランスで、高度難聴の人は補聴器を使わないと生活上のデメリットがとても大きくなりますが、難聴の程度が軽い人なら費用に対するメリットも下がっていきます。それは人によっても違います。
日本で補聴器を使う人が少ないのはなぜ?
聴を自覚している人の補聴器の所有率は15%程度です。欧米ではだいたい40~50%なので、かなり低い。ただし、それは文化の違いもある。家族から「テレビの音、大きい」と言われて難聴に気づく人も多いです。人がたくさんいる店など雑音下での聞き取りが落ちるというのも、気づくきっかけになるでしょう。
補聴器のほかに集音器というのもあります。補聴器は一般に片耳15万円以上かかるのに対して、集音器は1万円や2万円程度ですし、ネットでも買えます。集音器は電化製品で、補聴器は医療機器です。集音器はボリュームを大きくするだけです。一方、補聴器はその人の聴力に合わせて細かく周波数を調整します。また、補聴器にはリミッターがついていて、最大出力音圧に制限が義務づけられています。近くで大きな音がしたとき、そのまま拾ってくるのが集音器。一方、補聴器は一定以上に大きな音は出せないです。安全性や性能を考えるなら補聴器です。補聴器を買うなら、まずは補聴器相談医。それから「認定補聴器専門店」です。貸し出し期間を用意していて、事前に耳鼻科にかかったかを確認してくれる店で買うようにしましょう。耳鼻科にかかって「補聴器が必要です」となると、その認定店に向けて情報提供書が書かれます。買った補聴器が医療費として確定申告のとき控除されるようになります。