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2016年5月

春眠暁を覚えず

春眠暁を覚えず 「春眠暁を覚えず、処処啼鳥を聞く、夜来風雨の音、花落つること知る多少」。
 この詩は、中国の唐の時代の詩人・孟 浩然(もう こうねん)によって詠われたもので、「春の夜は気候もよく心地よいので、夜明けも知らず鳥のさえずりが聞こえる。昨晩は嵐の吹く音がしたが、おそらく花がたくさん散ったことだろう」と訳されます。春は気候が良く寝やすいということもありますが、また日照時間が長くなり始めていることもあり、同じ睡眠時間でも、目覚める頃にはすっかり明るくなっているということを意味しているのです。つまり、昼寝ではなく夜の睡眠について詠った詩です。春になると皮膚の表面血流量が増え、交感神経系が活発になり、日中の活動量が増えます。その結果、疲労感やだるさが出やすく、夜はもちろん、昼間も強い眠気に襲われることが増えるようです。

 それでは、正しく日々の睡眠をキープするにはどうすればよいか。それは、規則正しい睡眠生活を送ることです。人の体には体内時計というものがあり、一定のリズムに合わせて生活をすると、体はそれに合わせて順調に動いてくれるようになります。前日の就寝が遅くなっても、朝はいつもと同じ時間に起床するのが正しい睡眠のとり方です。

 不眠には「寝つきが悪い」「夜中に目がさめる」「早朝に目覚める」「眠りが浅く、目覚めがすっきりしない」という4つの主症状があります。人は年をとると自然に睡眠時間が短くなり、眠りも浅くなりやすい。それにもかかわらず、若いころと同様に、「睡眠不足対策」という発想で対応すると「むしろ不眠が悪化しやすい」例えば、眠りが浅くて目覚めが悪いと感じたとき、しっかり寝ようと思って早く床につくという対策だ。眠気は、脳の中の「体内時計」が制御しており、毎日ほぼ同じ時刻になると強まる。だから、いきなり早く寝ようと思っても無理です。体に必要な睡眠時間は年齢とともに短くなる。個人差もあるが50代で6.5時間程度、60代以降は6時間で十分。8時間睡眠が理想と言われることも多いが8時間眠ってスッキリできるのは若者だけです。

 

睡眠薬とアルコール

睡眠薬とアルコール 眠れないときには睡眠薬を飲むのもおすすめですが、無いと眠れなくなるなどの「依存性が心配」という人もいるだろう。依存性が問題になるのは大量に服用の場合。1日1錠程度なら大丈夫です。長期間飲むと認知症のリスクが高まるという報告もあるがはっきりしたことは不明です。逆に不眠がアルツハイマー病のリスクを上げるとの研究もあります。必要な時は飲み、不要になったらやめるのがよい。日本で処方される睡眠薬の7割近くを占めるのが、ベンゾジアゼピン系と呼ぶタイプです。脳神経の活動全体を抑える神経伝達物質「GABA」の働きを促し、眠りに導くGABA受容体作動薬の一種です。約50年の使用実績があり、10種類以上が使われています。このタイプは処方されることが多い薬ですが、服用後にふらついて転倒し、骨折したり、認知機能の低下をもたらしたりすることがあります。特に高齢者は注意を要します。ベンゾジアゼピン系に次いで多いのが非ベンゾジアゼピン系です。やはりGABA受容体作動薬の一種で、筋弛緩(しかん)など睡眠以外に影響が出ないよう改善した薬です。一方、作用の仕組みが異なる薬として注目されているのは体内時計のリズムを整えるメラトニン受容体作動薬と、目を覚まさせる神経伝達物質「オレキシン」の分泌を減らすオレキシン受容体拮抗薬の2つがあります。寝つきが悪くても昼間、元気に散歩などができ、昼寝もせずに済むようなら不眠症とは違うかもしれない。

 薬代わりにアルコールを飲む人もいるが、眠りを浅くし、中途覚醒が増えます。睡眠薬の代わりにはなりません。厚生労働省が「節度ある適度な飲酒」という指標を設定しています。それによると「1日あたり純アルコールに換算して約20グラム程度(日本酒1合)」が節度ある飲酒の目安となるという。晩酌を「たまに」やる程度なら、たとえ就寝時間に近くてもさほどの心配はいりません。「節度ある適度な」アルコールであれば睡眠前半の深い睡眠(徐波睡眠)を増加させ、ぐっすり感をもたらすこともあります。

 ただし、睡眠の後半になるとアルコールの血中濃度が急激に低下する「リバウンド」のせいで、早朝覚醒をしてしまうことも少なくありません。平均的な大人の場合、1時間に7gのアルコールを代謝できます。日本酒1合であれば3時間で消失する計算です。就寝前まで飲んでいると深夜にアルコールが体から引けて催眠効果が消失するだけではなく覚醒してしまいます。アルコールはデキの悪い睡眠薬と言える。アルコールが睡眠に及ぼす影響には大きな個人差があります。日々寝酒でも快適睡眠という幸運な人もいる。ご自身の飲酒と睡眠の関係を見つめ直して、今後の晩酌のあり方に生かしてください。