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2017年12月

ハエの研究から体内時計の仕組み解明…今年のノーベル賞

ハエの研究から体内時計の仕組み解明…今年のノーベル賞

2017年のノーベル生理学・医学賞は米ブランダイス大学名誉教授のジェフリー・ホール氏と同大教授のマイケル・ロスバッシュ氏、ロックフェラー大学副学長のマイケル・ヤング氏の3氏に贈られました。授賞理由は「概日リズムを制御する分子メカニズムの発見」。人を含む動物、植物など多くの生物の体内の生理現象には約24時間周期で繰り返される「概日リズム」があり、一般的に体内時計と呼ばれます。3氏はショウジョウバエを使った実験で、概日リズムを制御する遺伝子やたんぱく質の働きを明らかにしました。ホール氏とロスバッシュ氏は体内時計に関わる遺伝子の機能を解明。その遺伝子によって特定のたんぱく質が夜間に増え、昼間に分解されて減るという周期的な変動を見つけた。さらに、ヤング氏はたんぱく質の増減を調節する遺伝子を特定した。
 体内時計は私たちの睡眠や覚醒(寝つきや目覚め)のタイミングを決定する非常に大事なシステムです。単細胞のバクテリアから人間を含む動物や植物まで、生物には体内時計の機能が備わっており、地球の自転による昼夜のリズムに合わせ、約24時間周期で睡眠やホルモンの分泌など様々な生理現象を調節する。体内時計の存在は古くから知られていましたが、仕組みは謎に包まれていた。このリズムを作るのが時計遺伝子というものだったのです。
 時計遺伝子には数多くの種類が確認されています。時計遺伝子の中で最初に見つかったのが、今回受賞した3人が発見したPeriod(ピリオド)というものです。Periodは現在でも最も重要な時計遺伝子の1つです。さらにマイケル・ヤングはその後Timeless(タイムレス)という別の時計遺伝子も発見しています。ピリオドはタイムレスと対になって働く。Periodの発見以降に体内時計のメカニズム研究が爆発的に進展しました。
 時計遺伝子によって体内時計が保たれる仕組みはどのようなものでしょうか。遺伝子は生物に欠かせないタンパク質を合成するための設計図です。ピリオドによって作られるたんぱく質は夜に増え、昼に分解されて減る。たんぱく質の増減の周期が体内時計のリズムを刻むのです。
 さて、体内時計は1日当たり10分程度ずれます。これを日々24時間リズムに合わせる(同調させる)ために絶対的パワーを発揮しているのは「光」です。朝ごはんを食べたからといって体内時計が朝型になって早寝早起きが楽になるわけではないのです。毎日朝食を摂るように心がければそれまでよりも早起きをしなくてはならず、体内時計を朝型にする朝日をより多く浴びるようになる。
 24時間体制で勤務する事業所も多いが、体内時計は「夜に眠気が強くなる」、「昼に目が覚める」ように常に脳と体に働きかけている。したがって夜間時間帯に効率よく仕事をしようということ自体無理である。体内時計の調整にはかなり時間がかかること。夜勤時間帯に眠気もなく活発に仕事ができるようにするには丸々12時間近くも体内時計をずらす必要がある。夜勤に体内時計を合わせるには3週間程度を要するといわれている。どうすれば安全かつ効率的に夜勤を行えるのでしょうか。まず体内時計は日勤に合わせて固定し、夜勤時の眠気には仮眠やカフェインで対処する。夜勤中の仮眠は重要で、体内時計の時刻を安定化させる効果もある。ただし眠気がとれてもパフォーマンスも向上しているとは限りません。
 一方、睡眠時無呼吸症候群の人は寝ているときに呼吸が止まってしまう病気でよく寝たつもりなのに疲れが抜けない。たびたび呼吸が止まってしまうことで脳や身体に大きな負担がかかり、寝不足状態となる。すると、体内リズムが乱れ、生活習慣病をさらに悪化させてしまいます。
体内時計は睡眠や生活習慣病に関係することがわかっています。規則正しいい生活は朝の光を浴びることから始まります。体内時計に負担をかけない生活習慣を心がけましょう。