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2021年1月

あけましておめでとうございます。今年は新型コロナワクチンの接種が可能となって平常な生活に戻れることを期待したいものです。本年も院内新聞を通していろいろな情報を発信していきます。ご期待ください。

米ファイザーとドイツのビオンテックが開発を進める新型コロナのワクチンとは

米製薬大手のファイザーや米スタートアップのモデルナが新型コロナウイルス感染症のワクチン。共通するのは遺伝物質を使う「mRNAワクチン」という製造方法にある。両社は日本政府とワクチン供給で基本合意や契約を結んでいます。11月には有効率9割以上という結果も示されました。

mRNA(メッセンジャーRNA)ワクチンの特徴

従来のワクチンは、ウイルスの毒性を弱めたり無毒化したりして体内に入れる。対してmRNAワクチンは遺伝物質である核酸を使う。ウイルスそのものを使っておらず、ウイルスの表面たんぱく質の遺伝情報を体内に送り込む。遺伝情報が細胞内に取り込まれるとたんぱく質が作られ(抗原となる)、免疫反応により抗体を誘導します。mRNAワクチンはこれまでに実用化されたものは存在しません。しかし、mRNAワクチンは以前からがんやウイルス感染症を治す手段として研究が進んでいた。

製造方法は既存のワクチンは生ものである細胞を培養するため工程が複雑になり、品質にばらつきが出る恐れもある。それに対しmRNAワクチンは、タンク内で製造できる。mRNAワクチンの主成分はとても不安定で、そのまま体内に投与するとすぐに分解されてしまう。そのため、ナノサイズ(ナノは10億分の1)の脂質粒子で包み込むことで安定化させ、体内の免疫細胞に遺伝情報を届ける。この主成分を包み込む粒子部分の作り方に各社特許で保護されています。この粒子が非常に不安定な物質なため、温度を厳密に管理しないと、活性が失われ、有効性や安全性に影響が出てしまうのでこの点が厄介です。今後安全性が確認され、早期接種が可能となる日を期待しています。

心の奥底に先入観…アンコンシャスバイアス

女性活躍の先進企業で聞き慣れない外来語が関心を集めています。無意識の思い込みや偏見をアンコンシャスバイアスと呼ぶ。ある調査によると、96%が何らかの形で性別や働き方などで固定的な見方をしていることがわかった。例えば「親が単身赴任中」という状況で父親を想像し、母親を思い浮かべない人は66%を占めた。単身赴任者は男性が女性より圧倒的に多い。だが、少数派の女性がいることを想像できず「なぜ母親なのに単身赴任するのか」などと問うことで、傷つく人がいるかもしれない。子育てにまつわる思い込みは根強く「育児中の社員に負荷の高い業務は無理」と考えている人は39%、「子供が病気になったときは母親が休んだほうがいい」とした人は21%いた。アンコンシャスバイアスは日常や職場にあふれ、ときに弊害をもたらす。コロナ禍で働き方の変化を求められている今こそ、ものの見方を変え、偏見のない社会にしていきたいものです。

加齢とともにゆっくり進行する難聴…認知症とも関係

職場の健康診断で行われる聴力検査は「選別聴力検査」というもので、自覚しにくい難聴のスクリーニング(拾い上げ)を目的としている。「オージオメーター」という機器とヘッドホンを用いて、低い周波数の1kHzの音と高い周波数の4kHzの音を聞き、聞こえたタイミングで正確に応答ボタンを押すことができれば、特に問題のない「所見なし」とされる。選別聴力検査はもともと、常に騒音にさらされている職場での聴覚管理を第一の目的として、定期的な実施が義務付けられたものです。そのため、騒音性難聴の初期で聞こえにくくなるといわれる4kHzの音が設定されています。一方、加齢に伴って起こる加齢性難聴は、8kHz以上の高音域から聞こえにくくなるため、ごく初期では職場健診で見つけるのは難しい。難聴の原因には耳垢がつまる耳垢栓塞(じこうせんそく)、鼓膜炎、急性・慢性中耳炎、滲出性(しんしゅつせい)中耳炎、騒音性難聴、加齢性難聴のほか、突発性難聴、メニエール病、聴神経腫瘍などが挙げられます。

ただ、職場健診で見つかることが多いのは、医療機関を受診するような自覚症状がほとんどなく、ゆっくりと進行する難聴です。先述した騒音性難聴、加齢性難聴もこれに当たります。加齢性難聴には、主に3つの特徴があります。1つは、音は聞こえても、言葉が明瞭に聞き取れないこと。例えば、テレビの音は聞こえても、会話が聞き取りにくいため、ボリュームを大きくしていることを、家族などから指摘されるケースがあります。2つめは、高血圧や脂質異常症、糖尿病といった生活習慣病があると聞こえが悪化しやすい。3つめは、難聴のなりやすさには個人差があり、遺伝的な要素が関係する。

65歳以上の難聴人口は約1500万人と推計されています。難聴があると認知機能の衰えが進むことが分かってきました。難聴を引き起こすすべてのメカニズムはまだ解明されていません。しかし、難聴の危険因子として最も大きな原因と考えられているのが、騒音です。10代や20代の頃に、大きな音量で音楽などを日常的に聞いていると、60歳を過ぎてから加齢性難聴になるリスクは非常に高くなります。また、大音量に長時間さらされると40歳くらいで難聴が起こることもあります。怖いのは、聴力機能は一度壊れたら元には戻らないということです。スマートフォンの音楽を長時間イヤホンで音楽を聴く習慣のある方は要注意です。今後このような方が増加することが危惧されます。一方、補聴器を使って聴力を補えば認知機能が改善するかどうかは不明です。一方、家族のサポートで補聴器を使うことにより、コミュニケーションが取りやすくなり、認知症に伴う周辺症状が改善される場合もあります。