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2021年3月

コロナワクチン…HPVワクチン(子宮頸がん)のようになってほしくない 安全性、有効性をみるデータとは?

新型コロナウイルスワクチンでも、有害事象を副反応のように報じているメディアが目立ちます。有害事象とは因果関係の有無は関係なく、医薬品の使用後に起きたあらゆる好ましくない有害な出来事。そのうち因果関係のはっきりしているものは、ワクチンの場合は「副反応」と呼びます。

新型コロナウイルスのワクチンについて、海外の研究や使用実績の報告から、安全性と有効性をどう評価しているのでしょう。製薬会社が行った第3相試験の有効性と安全性のデータがあります。
医薬品を承認するための研究「治験」は3段階に分けて行われ、少人数で安全性を確認する「第1相試験」、少人数で有効性を確認する「第2相試験」、大人数で有効性や安全性を検証する「第3相試験」が行われます。初めて開発されるワクチンの第3相試験では偽薬を投与したグループと比較し検証します。基本的に、治験の第3相試験で重大な副反応が確認されたらまず発売はされません。ただ、その中で、「第3相試験で6人死んだ」という報道がなされたことがありました。死亡者の半数以上である4人は偽薬を使ったグループだったということがわかりました。比較して偽薬の方に死亡が多いなら、薬と死亡は無関係なのです。

治験の結果はワクチンを接種した人の感染リスクは2万分の8ですから0.04%です。偽薬のグループの感染リスクは、2万分の162ですから0.81%です。両者のリスクを比較すると、0.04÷0.81=0.049ですから、ワクチンを接種することで、感染リスクを約5%まで激減させたことになります。これを有効率95%と表現しているのです。このワクチンが感染を予防することを示しています。

安全性に関してもこの試験で検証されていますが、副反応として見られたのは、疲労の3.8%と頭痛の2.0%のみです。重大なものは見られていません。ただし、安全性については短期間の反応しか観察していません。頻度が低いものや、長期の影響については、市販後の調査に頼らざるを得ません。市販後は、ワクチンをうっていない人と比較することが難しいので、接種した人たちの中で体調はどうなるのか見ていくことになります。

HPVワクチンでの経験ですが、うった後に体調が悪くなった人が出てくると、うっていない人と比較することなく、「ワクチンのせいだ」と考えがちです。HPVワクチンの時は、多くの接種した人は最初からワクチンのせいだと思ったわけではなく、お医者さんや薬害を訴える運動をしている人に、「ワクチンのせいだ」と言われ、そう思うようになりました。

そのため子宮頸がん予防の後進国になってしまいました。メディアがワクチン被害を訴える人たちをセンセーショナルに報じたからです。HPVワクチンを教訓に、新型コロナワクチンをうまく進めるためにはどうしたらいいか考えなければいけません。日本は欧米と比べて感染者数も死亡者数も少ないのが要因でしょう。すごく困っている国の状況を見て、重大な副反応が出るかどうかちょっと様子をみる余裕があります。既にイスラエルでは何百万もの人がうっている。アメリカでも3000万人はうっています。

パピローマウイルスに感染してから前がん病変になるまで数年、さらに浸潤がんに進むまで何年もかかる子宮頸がんと違い、新型コロナウイルスが感染して発症するまでの期間は短いです。ワクチンで防ぐ効果が、比較的短期間でわかります。

近い将来ワクチンをうった人はマスクを外していいこととなるはずです。「うった人はカラオケもできるし、居酒屋にも行ける」となる。アメリカの大学などはワクチンをうっていない人は保険にも入れないし、入学もできません。だからうたざるを得ない。

薬や治療法のエビデンスは、過去の人の協力の恩恵を受けてできあがったものです。日本人も積極的に人類のために協力しましょう。ワクチンで救えるはずの命がたくさんあるはずで、その裏で副反応や有害事象がある。でもワクチンで救った命の方が多いのです。HPVワクチンでも同じです。接種の順番が回ってきたら必ず受けることを薦めます。