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2023年12月

正常な状態と認知症の中間に存在する軽度認知障害(MCI)とは

 会話の中で人や物の名前がとっさに出てこない、財布やメガネを置いた場所を思い出せない、すでに買ってある物をまた買ってしまう。こうした「物忘れ」の経験はだれにでもあります。それが老化によるものなのか、認知症のリスクがあるものなのか、心配になると思います。軽度認知障害(Mild Cognitive Impairment:MCI)とは、正常な状態と認知症の中間とされる状態のこと。記憶力など脳の認知機能が低下して、買い物ができなくなったり、道に迷ったりして、自立した生活が送れなくなると認知症と診断されます。一方、自他ともに以前よりも認知機能が低下していると感じていても、自身の工夫や周囲の助けによって自立した生活が送れるようなら、MCIと考えられる。日本では65歳以上の13%、約400万人がMCIと推計されています。
 MCIと診断された人のおよそ5~6割は、現状のまま維持されたり、回復したりすることもあります。残りの5割程度の人は、認知症に進行する可能性があり、認知症の前段階や予備群と考えられています。アルツハイマー病は認知症の原因の約7割を占めています。MCIでも約5割がアルツハイマー病によるものと見られています。
 今年実用化された新薬レカネマブは、アルツハイマー病のメカニズムそのものに働きかけて、アミロイドβを除去することで、症状が進行するスピードを抑える。治療の対象となる基本的な条件は「早期アルツハイマー病」と診断され、脳内にアミロイドβの蓄積が確認されることとされています。アルツハイマー病によるMCIの場合、一定の条件を満たせば、レカネマブでの治療を検討することができ、症状の悪化やアルツハイマー病への進行を遅らせることも期待できるようになりました。アルツハイマー病によるMCIで特徴的な症状は、最近あった出来事を覚えていないことです。アルツハイマー病の場合は『忘れている』のではなくて、『記憶が定着していない』状態なのです。

脳の老化を防いで認知症を遠ざけるには…1日3回の食事で必要なカロリーや栄養成分をとること

いろいろな食品を摂取する「食事の多様性」が高い高齢者は、そうでない人に比べて、認知機能が低下しないとされています。食品摂取の多様性を評価する指標に用いられた食品群は、肉類、魚介類、卵類、牛乳、大豆製品、緑黄色野菜、果物、海藻類、油脂類などです。栄養バランスの良い食事をとることが大切です。
脳のゴミ、アルツハイマーの原因物質と考えられているアミロイドβをたまりにくくするには
1.ポリフェノールの摂取:ワイン、緑茶、カレーに使われるスパイスのターメリックなどは認知機能の低下リスクを軽減します。
2.不飽和脂肪酸を多く摂取:不飽和脂肪酸を多く摂取すると脳の機能を健康な状態に維持するため脳の血管を守ることができます。人体ではほとんど合成できないオメガ3系脂肪酸やオメガ6系脂肪酸をしっかりとるように心がけてください。オメガ3系にはドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、α-リノレン酸などがあり、オメガ6系はごま油や紅花油などに含まれています。DHAはサンマ、アジ、イワシ、サバなどの青魚に豊富です。煮たり焼いたり、お刺し身など生で食べるとより効率よく摂取できます。
一方、人工的に作られることが多いトランス脂肪酸は認知症全般および、アルツハイマー病の発症リスクが高いことが確認されている。トランス脂肪酸は多くの加工食品やファストフードなどに使われている。また、牛肉や豚肉の脂身などに多く含まれる飽和脂肪酸もとりすぎに注意が必要です。
3.減塩食:食塩のとりすぎは高血圧の原因となり、脳梗塞や脳出血などを引き起こすだけでなく、高血圧によって動脈硬化が進むと血管が硬くなって、脈拍が弱くなってしまうことで、脳のゴミであるアミロイドβの排出機能がうまく働かなくなると考えられます。
4.ウォーキングなどの有酸素運動:有酸素運動は動脈硬化をはじめとする生活習慣病の予防に欠かせないものだが、脳の老化予防にも勧められる。
和食中心の三度の食事を心がけ、毎日ウォーキングなどの運動により認知症を予防しましょう。