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2024年6月

病気の原因を狙い撃つ抗体医薬・・・幅広い分野の治療に活用

免疫が異物を排除するために使う「抗体」を医薬品として利用した、効きのいい抗体医薬が続々と登場しています。
 ウイルスや細菌などの異物が体の中に入ると免疫機能が働いて、その異物に対応する抗体が作られる。抗体が一度できると、そのターゲットとなる異物が体に入ってきたときに、抗体がくっついてブロックする。この免疫の仕組みを病気の治療に利用するのが抗体医薬です。
抗体とは体内の特定の異物をブロックするたんぱく質です。ウイルス、細菌、花粉など、体の中に入ってきた異物(抗原)を認識すると、免疫細胞の一種B細胞はその抗原をターゲットとした抗体を作る。ターゲットとなる抗原に出合うとくっついて、その機能をブロックする。
 抗体薬の最初は1901年の第1回ノーベル生理学・医学賞を受賞したベーリング博士のジフテリアに対する血清療法です。これは馬にジフテリア毒素を注射して作られた抗ジフテリア抗体を含む血清を患者に注射するものでした。近年のバイオテクノロジーの発展で、単一のたんぱく質をターゲットとする人間の抗体(ヒトモノクローナル抗体)を工場で大量生産できるようになりました。
抗体は分子量が従来の医薬品の約千倍と大きい分子量のたんぱく質で、口からのむと消化管で分解されてしまうため、点滴や皮下注射でしか投与できないのが欠点です。しかし、その分子量の大きさが利点にもなっています。従来の医薬品の多くは低分子の化合物で細胞の中など全身のあらゆる場所まで入り込むため、さまざまな副作用を引き起こす可能性がある。一方、抗体は血液とともに全身をめぐるが、細胞の中までは入れないのでDNAなどに影響を与える心配がほとんどないといわれています。また、抗体医薬は肝臓や腎臓で分解されないため、いったん注射すれば1~4週間くらいは体内に残る。骨粗しょう症の薬など半年に1回の注射でよい場合もあり、毎日薬をのむよりは楽です。このように抗体医薬が続々登場しているのは病気の原因が詳しく解明され、特定のターゲットが分かってきたからです。
 現在国内で治療に抗体医薬が用いられている病気のひとつが関節リウマチです。関節リウマチは、免疫機能が暴走して関節の内側にある滑膜(かつまく)に慢性的な炎症を起こし、関節まわりの骨を溶かしてしまう病気。免疫細胞が作る炎症性サイトカインによって引き起こされる。サイトカインには多くの種類があるが、関節リウマチではある種の炎症性サイトカインが過剰に作られることが分かっているため、抗体医薬を使ってこれらの炎症誘因物質の働きをブロックすることで関節の炎症を抑えます。