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2014年8月

ハント症候群(ウイルス性顔面神経麻痺) ― 重症例を減らすために水痘ワクチンを

ハント症候群(Ramsay Hunt症候群)は、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)によって生ずる顔面神経麻痺を主徴とする疾患です。小児期に罹患した水痘の口腔粘膜疹からVZVが逆行性に、あるいはウイルス血症によって顔面神経の膝神経節に到達後潜伏し、後年それが再活性化することで顔面神経麻痺、すなわち顔面半側の表情筋運動障害が発症します。加えて周囲の脳神経にも波及し、耳介の発赤・水疱形成や耳痛、難聴、めまいなどを合併します。逆に顔面神経麻痺のみの症状のみで、VZVが関係しない原因不明の麻痺の場合ベル麻痺といいます。これも近年、単純ヘルペスウイルスが関与するといわれています。
ハント症候群はベル麻痺と比較して一般に予後が不良であり、自然治癒は30%(ベル麻痺70%)、初期から十分に治療を行っても治癒は60%(ベル麻痺90%)程度に留まります。すなわちいったん罹患すると、麻痺が残存する可能性が高い点がベル麻痺と大きく異なる。顔面神経自体の変性は発症後も進行を続け、7~10日で完成します。この時点で麻痺の予後が決まってしまいます。つまり発症後速やかに、かつ十分な治療を行い、神経変性を如何に軽減するかが治療の最も重要な点なのです。ハント症候群は顔面神経麻痺から始まる例、耳痛や耳介発赤、水疱形成が先行する例、難聴やめまいが先行する例など、その発症形式は様々であり、患者は症状に応じて脳外科、耳鼻科、皮膚科、内科などを受診します。その際、診察医がハント症候群の可能性を念頭に適切に投薬を行えばよいが、残念ながらそうではなかった患者に遭遇することも決して少なくありません。すべての症状が揃ってから耳鼻科を紹介され受診するころには、神経変性はすでに進行・完成してしまっている。患者の顔面神経の運命は、発症後10日以内の治療が大きく左右します。
以上のように、ハント症候群はいったん発症するとその約半数は完治せず、後遺症は患者にとって辛く精神的な負担が生涯にわたって続くことになります。したがってハント症候群を発症させないことが最も重要です。したがって、まずは水痘に罹患させない、つまり幼少児期の水痘ワクチン接種が予防に有効です。一方、水痘既往のある成人においては、ウイルス再活性をきたさないことが肝要です。水痘既往のある成人での発症を予防するには、水痘ワクチンの接種によるVZV特異的細胞性免疫能の強化が有効であると考えられています。水痘ワクチンは水痘や帯状疱疹のみならず、ハント症候群の予防という点からも定期接種化が望まれていました。

厚生労働省は今年10月から水痘ワクチンの定期接種を予定しています。

接種対象:生後12カ月から生後36カ月の小児
接種方法:乾燥弱毒生水痘ワクチンを3月以上の間隔で合計2回皮下注射
標準的な接種期間:生後12カ月から生後15カ月までに初回接種,同接種終了後6~12カ月で追加接種
経過措置:生後36カ月から生後60カ月の小児に1回接種(ただし,2014年度限り)
その他:水痘既罹患者は接種対象外,任意接種として既に水痘ワクチンの接種を受けたことがある者は既に接種した回数分の接種を受けたものとみなす
(例えば1歳時に1度同ワクチンを任意接種し,2014年10月~15年3月に生後36月~60月で未罹患の場合は経過措置の対象に含まれる)
経過措置に含まれる方は結構多いと思われます。また半年しか猶予がありませんのでご注意下さい。