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2017年7月

「命の回数券」テロメアを守れ 運動や睡眠が重要

運動や睡眠が重要

人間の細胞の中にある染色体(DNA)。健康長寿の鍵とされるのは、その端にある「テロメア」と呼ばれる部分です。正体は、塩基という化学物質。染色体を保護する役割を担っています。しかし、細胞が分裂するたびに少しずつ数が減り、テロメアは短くなっていきます。どんどん減って最終的には細胞がこれ以上分裂できなくなる「細胞老化」と呼ばれる状態に陥ります。細胞分裂を繰り返すたびに短くなっていくのです。これが老化と深い関わりを持つと考えられてきました。 テロメアが減ると新たな細胞ができなくなるため、命の回数券とも呼ばれています。テロメアの状態が、がんや動脈硬化といった様々な病気に関係しており、生活習慣を見直すことでテロメアの状態を良好に保てることも分かってきました。健康で長生きするためテロメアとどうつきあえばいいのでしょうか。

一方、生物はテロメアを再生する働きも備えています。テロメラーゼという酵素です。皮膚や血管、血液など細胞の種類によって条件は異なるが、細胞分裂による「引き算」とテロメラーゼの働きによる「足し算」でテロメアの長さが決まります。例えば皮膚がんや肺がんの場合。日光を浴び過ぎたり、たばこを吸い過ぎたりすると、紫外線や有害物質の作用で細胞が傷つきます。細胞は新しくなるため活発に分裂するようになり、これに伴ってテロメアが短くなります。テロメラーゼの働きが追いつかないと、細胞の中では染色体がテロメアを失って不安定になり、他の染色体とつながってしまったりします。こうしてがんのリスクが高まります。アルコール性肝炎から肝硬変、肝臓がんへと進行するときもこうしたことが起こります。

テロメア研究の業績で2009年にノーベル生理学・医学賞を受賞したエリザベス・ブラックバーン博士らが、生活習慣とテロメアの関係についての研究成果をまとめました。それによると、「心理ストレスにさらされていないか」「睡眠を十分にとっているか」「適度な運動をしているか」「健全な食事をとっているか」といったこととテロメアの状態の関係が深いということです。睡眠に関しては、毎日5~6時間しか眠っていない高齢者のテロメアは短い傾向がありますが、7時間以上睡眠をとっている高齢者の場合は、中年の人と同じかそれ以上の長さでした。運動については、過去10年間、運動習慣のある人は、そうでない人と比べてテロメアが長い傾向にありました。喫煙もテロメアを短くします。特に強調しているのが、ストレスとの関係。ストレスを除くのにマインドフルネスと呼ばれる瞑想(めいそう)が注目されていて、テロメアが伸びたという研究成果もあります。適度な運動や適切な食生活、良質な睡眠、ストレスをためないことなどはいずれも健康・長寿の秘訣とされてきました。テロメアに注目することで生活習慣と健康状態や病気との関係をより科学的に証明したのです。テロメアの長さで寿命が完全に決まるわけではありません。例えばテロメアが短いけれども、長生きの人っていうのが分かっています。健康を決める要因というのは、他にもたくさんあり、テロメアというのは、その指標の1つでしかありません。テロメアを伸ばす酵素「テロメラーゼ」の分泌を体内で促すというサプリメントが売られています。しかし、こうしたサプリは長期使用性成績がありません。テロメラーゼが過剰になると害もあるのです。テロメラーゼは心臓病や認知症などの病気のリスクを低下させるのですが、残念ながら(過剰になると)逆に、特定のがんのリスクを高めてしまうのです。テロメラーゼがあり過ぎると、いろんな形の悪い染色体がたくさん出来ることが分かっていてこれも問題なのです。