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2020年6月

アビガンが映す日米の差 非常時の薬許可、米は機動的…アビガンへの期待

新型コロナ治療薬として期待される国産薬「アビガン」(経口薬)
の5月中の承認が見送られました。臨床研究などを進めていますが有効性をまだ確認できないからです。一方、一定の効果が示された米国の「レムデシビル」(点滴)は米食品医薬品局(FDA)から緊急使用許可が出て、日本でも特例承認されました。非常時に薬を認める制度は米国の方が機動的です。

アビガンは富士フイルム富山化学の新型インフルエンザ治療薬でした。ウイルスの増殖を抑える効果があるため新型コロナ患者に投与して効果があったとする症例報告があり、科学的に効果と安全性を調べることになりました。藤田医科大学などが無症状・軽症者を対象に3月から臨床研究中です。富士フイルム富山化学が肺炎になった患者を対象に始めた臨床試験(治験)も続けています。

一方、レムデシビルは現在国内で認められた唯一の薬で、医師は新型コロナ患者に普通に使えます。ただ、レムデシビルは米中で異なる治験結果が報告されるなど有効性について結論は出ていません。いわゆる「仮免許」の状態です。使用時の利益がリスクを上回ると考えられ、利用可能な代替品がないと判断すれば未承認薬の一時的な使用を認められたのです。米当局は後から効果がないと分かれば取り消せます。同時並行でギリアド社は数千人規模の治験を実施中で「本免許」である薬事承認の手続きも進めています。

レムデシビルが素早く認められた日本で、アビガンがなかなか承認されないのはなぜか。違いは薬が海外で認められているかどうかです。アビガンは胎児に奇形が生じる副作用が指摘されるが、一定の安全性が認められています。治験も各国で進んでいます。だが肝心の新型コロナに対する信頼性の高い結果はまだ出ていません。薬の承認は国内の治験を経なければなりません。治療薬の開発に向けては、試験方法が適切に設計され、治療効果を比較するための対照群(詐薬投与)を置いたランダム化比較試験を実施しなければなりません。ただ厚生労働省は今回、別の形でアビガンの早期承認を目指しています。「極めて高い有効性が示されれば薬事承認という流れも想定していた」のですが、期待通りにはいかないようです。

アビガンは現在でも患者が同意し医師が必要と判断したら投与できる。人道的観点の「観察研究」という枠組みです。医療機関の倫理審査を経る必要があるものの、既に患者2000人以上に投与されています。日本は薬の承認で慎重な制度を敷いており、一般に承認まで時間がかかる半面、一度認めた薬は取り消されにくい。今回、新型コロナに直面し、慎重さと性急さが入り交じった姿勢がみえる。薬の承認に向けた慎重な研究と医療現場への薬の素早い供給を期待したいものです。

「座りっぱなし」があなたの健康をむしばむ

「座りっぱなし」とは「じっとしていてほとんど動かない状態を言います。筋肉は、体を動かす運動器であると同時に、全身の代謝と深くかかわる臓器です。下肢の筋肉は、収縮することで血液中のブドウ糖を細胞内に取り込む作用があることが分かっています。座っていることが長時間続くと、筋肉に刺激が入らず、糖の代謝が悪くなります。さらに脂肪を分解する酵素の働きも低下して、血糖値や中性脂肪値を高めてしまう。

また、ふくらはぎは第2の心臓と呼ばれ、足先まで届いた血液を、重力に逆らって心臓に戻すポンプのような働きをしている。座っている姿勢ではひざや腰が曲がっていて、立っている状態よりも血液が心臓に戻りにくくなります。さらにふくらはぎの筋肉が使われないため、ポンプ機能が働かず、血流が悪くなります。そのため心臓に血液を戻すため血圧を高め、しいては血管にダメージを与える可能性があります。

こうした、代謝機能の悪化や血流の低下、血管へのダメージは、メタボ(メタボリックシンドローム)と同じように、動脈硬化を引き起こし、糖尿病、心疾患などのリスク上昇へとつながっていく。世の中が便利になることで、身体をこまめに動かす機会はどんどん減っています。最近は新型コロナウイルスの影響で外出が減り、テレワークの導入が急速に進んだ結果、家で座りっぱなしで過ごす時間がどんどん増えています。こうした不活発な時間の増加による健康状態の悪化が、今後じわじわと進んでくるのではないでしょうか。

健康リスクを回避するためには「こまめに立ち歩く」頻度を増やして、日常生活の見直しをしましょう。ともかく体を動かそうと思うことが大切です。いろいろな運動がありますがスクワットは下半身だけでなく全身の多くの筋肉を使う、「一番大事な種目」ともいえる重要な筋トレです。スクワットは「キング・オブ・エクササイズ」と呼ばれ、きわめて全身運動に近い動作です。運動の種類は問いませんので30分から1時間に一回は体を動かしましょう。