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2022年6月

大人になってから出る食物アレルギー

 

 食物アレルギーには乳幼児期に発症するものと、おとなになってから発症するものとがあります。乳児や幼児早期に発症することが多い卵、乳、小麦に対する食物アレルギーは、加齢とともに耐性を獲得してアレルギー反応を示さなくなります。しかし、おとなになってから発症する食物アレルギーは耐性を獲得できず、生涯にわたって原因食物を除去する必要があります。
 これは交差反応といって抗原として認識されたあるタンパク質によく似た構造を持つ別のタンパク質(食物など)が体内に侵入すると、最初に作られた抗体が別の物質(食物)の抗原の特徴が似ているためにアレルギー反応を起こすのです。

 

1.ラテックスアレルギーによる食物アレルギー(ラテックス-フルーツ症候群)

 

 天然ゴムラテックスを使用した手袋によるアレルギーは、手袋の使用頻度の高い医療者の中では有名です。ラテックスアレルギーの患者の30~50%にラテックス-フルーツ症候群が認められ、バナナ、くり、ソバ、アボガドが特に即時に全身症状を伴うことがあり、メロン、トマト、キウイフルーツ、などの口腔内のアレルギーのみと軽度の症状が出ます。果物アレルギー患者の約11%にラテックスアレルギーがあるとの報告もあります。原因食物を避けるだけでなく、感作源となる天然ゴム製品との接触を避ける必要があります。

 

2.ネコアレルギーによる獣肉アレルギー(pork-cat症候群)

 

 ネコの毛や体液などに含まれる血清アルブミンに経気道的に感作して発症する即時型アレルギーで1~3%に見られる。生物学的近縁種の動物の肉や組織に含まれるアルブミンで交差反応が生じ、豚肉や牛肉の摂取で症状を来す。ただし、アルブミンは熱に弱いため、十分に加熱した場合は症状が出ないこともある。原因物質の摂取を避けることに加え、感作源となったネコなどの動物への曝露を極力避けるよう指導したい。ネコ以外のペット(イヌやハムスターなど)への曝露が原因になることもあります。

 

3.マダニ咬傷による経皮感作が原因となる獣肉アレルギー

 

 マダニの唾液に含まれる糖鎖に感作されて発症する。マダニは田畑や公園などにも生息しており、咬まれても気付かないことが多い。マダニによる獣肉アレルギーでは、摂取後2~6時間経過してから生じる蕁麻疹やアナフィラキシーなどの遅発性アレルギー症状がでます。ウシやブタ、ヒツジ、ウマ、シカなどの肉を摂取することで主に発症します。

 

4.鳥愛好者における鶏卵アレルギー(bird-egg症候群)

 

 成人してから発症することが多い卵アレルギーで、飼育している鳥の羽毛や糞などに経気道感作して発症するbird-egg症候群があります。小児期の鶏卵アレルギーが卵白で生じやすいのとは対照的に、bird-egg症候群は、特に卵黄に反応しやすいという特徴があります。

 

5.クラゲに刺された後に納豆摂取でアナフィラキシーに

 

 サーファーなどマリンスポーツを好む住民が多い地域で患者が多いのが、クラゲなどの刺胞動物の刺傷で感作が成立する納豆アレルギーです。粘稠成分のポリガンマグルタミン酸(PGA)を主要抗原とし、多くは遅発性のアレルギー症状を呈します。PGAは納豆の発酵過程で初めて産生されるため、納豆以外の大豆製品にはアレルギー反応は出ません。納豆アレルギーでは意識消失を伴うアナフィラキシーショックを生じやすい。

 

6.スギ花粉症の人がアレルギーを起こしやすい食物

 

 トマトにはスギ花粉に含まれるたんぱく質と似た構造を持つたんぱく質が含まれており、スギ花粉症の患者さんは、トマトを食べたときに口の中に違和感を感じるケースがまれにあります。ただ発症率は少なく、ほとんどの人がトマトを食べても何も起こっていないので、あまり心配する必要はありません。

 

7.ハンノキ、シラカンバ花粉症の人がアレルギーを起こしやすい食物

 

 花粉・食物アレルギー症候群が最も多くみられるのが、ハンノキ、シラカンバなどのカバノキ科植物の花粉症です。次のような食物に対し、アレルギー反応を示すといわれています。
リンゴ、モモ、びわ、ラ・フランス、サクランボ、あんず、アーモンド(バラ科)
大豆、ピーナッツ、豆乳など(マメ科)
キウイ(マタタビ科)
パパイヤ(ウルシ科)
じゃがいも、トマト(ナス科)
アボガド(クスノキ科)
ヘーゼルナッツ(カバノキ科)
メロン、スイカ(ウリ科)
ハンノキ、シラカバの花粉に含まれるたんぱく質は、りんご、もも、大豆などに含まれるたんぱく質「PR-10(Pathogenesis-related protein -10)」と呼ばれるもので、PR-10アレルギーともいえます。PR-10は熱や酸に弱いため、加熱すればアレルゲンは消失します。

 

8.カモガヤ、オオアワガエリ花粉症の人がアレルギーを起こしやすい食物

 

 身近な雑草であるカモガヤ、オオアワガエリの花粉症の人は、つぎのような果物や野菜で、口、唇、喉にかゆみや腫れを起こすことがあります。
メロン、スイカ、きゅうり、ズッキーニ(ウリ科)
セロリ(セリ科)
トマト、じゃがいも(ナス科)
キウイ(マタタビ科)
オレンジ(ミカン科)
ピーナッツ(マメ科)
バナナ(バショウ科)

 

9.ブタクサ、ヨモギ花粉症の人がアレルギーを起こしやすい食物

 

 ブタクサも花粉症患者が比較的多い植物です。ブタクサもヨモギも、カモガヤと同じ「プロフィリン」というたんぱく質を持っており、これが花粉症の原因といわれています。そのため、プロフィリンを含む野菜や果物を食べると、口、唇、喉にかゆみや腫れを起こすことがあります。
メロン、スイカ、きゅうり、ズッキーニ(ウリ科)
セロリ、にんじん(セリ科)
トマト、じゃがいも(ナス科)
キウイ(マタタビ科)
オレンジ(ミカン科)
ピーナッツ(マメ科)
バナナ(バショウ科)